【事件簿】同じ轍を踏まない

私の息子が小学生のとき、あるサッカーチームに所属していました。
そのチームは全国大会常連チームでレギュラー争いが激しく、親同士もライバル心剥き出しでなかなか親しくなれないほどでした。

私の息子は何とかぎりぎりレギュラーになれるかなれないかのボーダーライン上の実力で、毎試合、試合に出ることができるのか冷や冷やしながら観戦していました。

そのチームメイトのお母さんたちはいつもきれいに着飾って応援に駆けつけていました。その中でも抜きんでてきれいなお母さんがお一人おられ、父親たちの中では「あのお母さん、いいよね」なんて話題にもなっていました。ただ、そのきれいなお母さんの息子のサッカーの実力はイマイチで、サブメンバーになっていたのです。

しかしあるときから、そのきれいなお母さんの息子が練習試合とはいえ、レギュラーに大抜擢されたのです。親たちは言葉には出しませんが驚きを隠せませんでした。明らかに一人だけ目立って下手なのです。そのあおりを受けたのは私の息子でサブメンバーに回ってしまいました。ただ、大事な試合や公式戦では私の息子がレギュラーに戻り、練習試合ではそのきれいなお母さんの息子がレギュラーになるという選手起用になっていました。不思議な選手の采配をするコーチです。

大事な公式戦を控えたある日、突然そのコーチが練習に来なくなったのです。全国大会常連チームなので代わりのコーチは他にもいるので支障はなかったのですが、その日から私の息子がレギュラーに固定され始めました。

もうお察しの通り練習に来なくなったコーチときれいなお母さんが男女の関係になってしまい、その関係がチームのオーナーにバレてクビになったというわけです。あおりを受けていた私の息子はその後チームで厚い待遇を受けるようになりましたが、私たち家族にとっては苦い思い出となりました。

そこで私はこの教訓を活かし、現在サッカーチームのオーナーになりました。まだまだ弱小チームですが、部員はそれなりに集まってきました。

今日も入部希望者が現れました。今日のお母さんはとてもきれいなお母さんです。あ、この息子はレギュラー確定だな……。

先ほどお話しした息子のコーチはクビになりましたが、私はオーナーなのでクビになりませんものね。お母さんの品定めに忙しい私です。あのコーチと同じ轍は踏まないように気を付けながら…。

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