X



【事件簿】インカムって便利な機器、ご存じですか?

インカムとは、無線機器の一種で、ヘッドフォンとマイクが一体化していて、イベントなんかでスタッフが複数人と連絡を取り合う事ができる機器です。見かけたことがある方もおられるでしょう。この機器、すべての人が会話に参加できるので、機器を装着していれば、その会話に関係のない人も含め、すべての人に会話が聞こえているのです。

あるイベントの現場責任者であった私は部下全員にインカムを装着させスタッフ同士の密な連絡をとり、このイベントを成功させるように努めていました。

総責任者は田中部長という、上品で穏やかでそして美しい女性の上司だったのです。スタッフ全員が憧れる素敵な方で、私もその方のようになりたいと思って頑張っていました。

イベントが始まり順調に進んでいたのですが、若手スタッフのミスで急遽対応しなければならないトラブルが発生したのです。私はそのとき、離れたところで作業をしていたので、すぐに駆け付けることができなかったのです。慌ててスタッフ全員にそのトラブル処理に対応するようにインカムで指示を出しました。トラブルを起こした若手スタッフが、どうしていいかわからずオロオロしているだけでしたので、すぐに応援が必要だったのです。

ところが、インカムから「もう、トラブルは大丈夫なので応援は結構です。」と頼りない女の声が聞こえるのです。現場責任者の私を差し置いて「何を生意気な」と感じた私は「いや、すぐに対応できる者は応援に向かってくれ!」と全員に大きな声で叫んでいました。するとまた小さい声で「大丈夫ですから。応援に来なくて結構です。」と聞こえるのです。そんな悠長なことを言っている場合じゃなかったので「大丈夫かどうかは俺が判断するんだ。さっきから偉そうに、大丈夫だと言っているお前は一体誰だ!名を名乗れ!」とまくし立てたのです。

 

もう、お分かりですかね。インカムから上品な声で「田中です」という私の興奮を一気に冷ましてくれる一言。私は「………えっと、わかりました…」というのが精一杯でした。しかもスタッフ全員がこの田中部長とのやりとりを聞いていたのです。とても恥ずかしくまた、憧れの田中部長に迷惑をかけた瞬間でした。

後でわかったのですが、田中部長の声だと気づいていないのは私だけで、スタッフ全員がこのような展開を予想し、ニヤニヤしながらインカムの声を聞いていたらしいのです。穴があったら入りたい、というのはこのことです。

便利なものも使い方次第、機械音痴の方はお気をつけください。

humikuma:
Related Post