【事件簿】合羽事件

このお話は思い出したくもない私の経験談の一つで、執筆するか迷いましたが、皆様に喜んでいただけるのであればと思い、勇気を出して執筆することにしました。

私が会社に出勤する時間は概ね始業時間の1時間前です。なぜかと言いますと、まず部下からの急な休暇の連絡に対応するためと、一人で落ち着いて仕事をしたいから、という理由です。私の他にも同じような考えを持つ方がおられるのでしょうか、概ね同時刻に出勤される方も少数おられます。まず一人は年配の方で定年退職後に再雇用された大先輩です。失礼ながら加齢臭が漂っているイメージのおじさんです。

もう一人はまだ若い女性で、他の先輩が出勤する前に机を拭いたり、お湯を沸かしてくれたりと、気の利く女性職員です。しかも彼女は容姿も優れており男性職員から大人気の職員です。彼女とすれ違う時には若い女性特有の甘美な香りがするので、私は彼女とすれ違うのを楽しみにしていたくらいです。天は二物を与えず、といいますが嘘ですね。

彼女は自転車で出勤していましたので雨の日にはカラフルな花柄の合羽を着て出勤していました。その合羽姿も実に可愛いのです。

ある雨の日、私が出勤後トイレに向かう途中、カラフルな花柄の合羽が廊下に落ちているではありませんか。彼女の合羽です。私はそれを拾って彼女に届けようとしたのですが、周りには誰もいなかったので良からぬことが頭に浮かんでしまったのです。私はその合羽の内側に顔面をうずめ、彼女の香りを楽しみたくなったのです。その恥ずかしい行為をしようと決断し、合羽を広げた瞬間のことでした。「すみません、それ私のです、拾ってくださったのですね、ありがとうございます。」と、彼女ではなく、再雇用された大先輩が現れたのでした。

私は「………、いえ、どういたしまして…」というのが精いっぱいで慌ててトイレに逃げ込みました。誰にもバレていないとは思いますが、「あのおじさんが、あの合羽?もっと地味な合羽にしろよ!」と訳の分からないことを言いながら、そのおじさんを恨んでしまったのでした。

誰も周りにいないからと言って良からぬことをするとバチが当たりますので、皆さんもご注意くださいね。

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